ラブバトル・トリプルトラブル
 祖父のエスコートで、一歩一歩祭壇に近づく美紀。


「待ったー。その結婚待ったー!!」

それでも駆けつける三人。

その姿を見て、沙耶も歩みを進めた。


(ちょっと待った! 自分も行きたい。正樹の元へ行きたい! 素直に好きだと言いたい)

でも……
沙耶は躊躇った。

美紀の中で……
結城智恵が……
長尾珠希が……

微笑んで居るのが見えたからだった。


(お姉さん……)

沙耶は又しても、壮大な珠希の正樹を思う心に折れたのだった。


でも屈辱ではない。
清々しい負けだった。


「美紀ちゃんー!」
沙耶は思いっ切り大きな声を掛けた。


「幸せになってね!!」

そう叫びながら、沙耶はいつの間にか微笑んでいた。

姪を嫁がせる叔母の心境になって。




 どうしても諦めきない大は、二人を引きずって駆けつけた。

当たり前だった。
正樹は本当に美紀を大に託す気でいたのだ。

大はそれに気付いていた。
だから強気だったのだ。


それでも、今更ながらに美紀の前に跪き再度手を差し伸べプロポーズをする。


「美紀ちゃんー。お願いだー!!」


「どうか、俺達を見捨てないでくれー!!」


「お母さんなんて、呼べる訳がないよー!!」

みっともない程足掻き、拝み倒そうとする三人。




 「ありがとう秀ニイ。ママのラケットを遺してくれて……優しさをありがとう」

その言葉を聞いて、秀樹は固まった。


(やっぱり!? 知っていたのか?)

何時も明るく振る舞っていた美紀。
その陰で涙を拭う美紀を秀樹は想像していた。


「ありがとう直ニイ。私を甲子園に連れて行ってくれて……思いやりをありがとう」


(いや、美紀。それを言うのは俺達の方だよ)

美紀が何時も傍にいてくれたからあのホームランが打てたんだ、そう直樹は思っていた。


「ありがとう大君。アナタがいたから楽しいかった……心遣いをありがとう」


(そう思うなら、この結婚待ってほしい)

そう、大はまだ諦めてはいなかった。




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