ラブバトル・トリプルトラブル
 ――君達はあの家で――


「えっ俺達に使わせてくれるのですか?」


――信用しているから――


「でも美紀が居ない」
秀樹が寂しそうに呟いた。


――大君と言ったね。君も一緒に暮らしたら――

それを見て大は喜んだ。

確かに美紀は居ない。
でも、気の合った仲間同士で暮らせるのもいいかもしれないと思っていたのだった。


「ヒデ、ナオ。よろしく頼むよ」

大は二人に握手を求めた。


「うーん、まあ此方こそよろしく頼むよ」
二人同時に言った。


「やはり双子だ」
大はしみじみと言った。


これから三人は、大阪で暮らすことになる。

それが美紀を守るためのサプライズとも知らず、三人は大阪暮らしを夢見始めていた。




 美紀は祖父の決意を知っていた。
自分達と一緒に居たいと願った結果だと思い、素直に喜んだ。

此処なら病院も近いし、直ぐ傍には福祉センターもある。


だけど、故郷を離れることはきっと辛いはずだと思った。

それでも自分と居たくて……
自分はそれほど愛されている。
そう思った。

本当は秀樹と直樹とも暮らしたかった。

でも、何時邪魔されるか解らない。
だから祖父に感謝した。

二人っきりの生活を確保してくれた祖父に……


だから美紀は、そんな祖父の思いやりや志に感謝しながら……
やはり愛する正樹の胸に飛び込んで行ったのだった。




 (例え美紀に智恵や珠希が憑依していたとしても、美紀には違いない。愛してやろう三人分。この愛の全てを掛けて)

正樹は全身全霊をかけて、美紀を愛し抜くことを自分自身に誓っていた。




 何も知らされていない正樹は、如何なる邪魔が入ったとしても美紀だけを愛することを誓った。
そう、やはり正樹は誰よりも美紀を愛していたのだった。
初恋の人より……
死に別れた妻よりも。


今、美紀は……
熱い愛の炎を灯した正樹の厚い胸にしっかりと受け止められた。


全員が目を細める見守る、そんな中で。


でも正樹に愛して貰おうとして、美紀の中でバトルが勃発しようとしていた。

智恵・珠希・美紀。
それは新たなトリプルトラブルの出発点となりつつあった。

このトリプルトラブルハブバトルは、正樹の愛を更に震え立たせるだろう。
それは美紀の幸せのために珠希と智恵の二人が仕掛けるトラップとなって……




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