ラブバトル・トリプルトラブル
 大君と二人で最寄り駅から電車に乗りでまず新大阪まで移動した。

其処で直樹君と秀樹君と落ち合う予定だった。
改札口でボンヤリしていたら、肩を叩かれた。


(えっ!?)
一瞬誰だか判らなかった。

其処には帽子を目深に被った秀樹君がいた。


「一応ファン対策」
秀樹君が恥ずかしそうに呟いた。


「あっ、大阪だからね。それに坊主頭じゃ寒いしね」

私は妙に納得していた。


直樹君は寒さ対策のためか、パーカーで坊主頭を隠していた。

朝は確かに秀樹君と同じ帽子で出掛けたはずなのに……


「あの帽子、秀に取られた」
耳元に内緒事。

「酷いよ、秀樹君……」

私がそう言おうとしたら、直樹君に止められた。
そっと直樹君を見ると僅かに首を振っていた。

だから私も頷いた。

その態度だけで直樹君と秀樹君の力関係を理解した。

凄く凄く悔しい。
だから直樹君は悩んでいたんだ……

私はやっと直樹君の置かれた立場を理解した。

ワンマンで俺様で人の迷惑省みない人なんだと思った。


改札口を抜け、新幹線のホームに移動して自由席に乗り込んだ。


「贅沢は言えないから」
直樹君は私を気付いながら、空席を目指していた。




 上野駅まで約三時間。
私は直樹君の隣りで悶々とした時間を過ごすしかないのだろうか?


『心配要らないよ。中村さんのことは俺が何とかするから』

出掛ける前の直樹君の言葉にドキッとした。

まるで何もかも知っているかのようだ。

でもそれが余計に怖い。
直樹君はきっと私はママが憑いていると思っているに違いないのだから。


本当のことを知ったら、きっと愛想を尽かされる。
直樹君が探し求めていた初恋の人だと知って、私は益々離れるのがイヤになっていたのだった。


新幹線では二人は隣同士だった。
きっと大君が考慮してくれたのだろう。


でも私は直樹君のことはそっちのけで考え事ばかりしていた。


(結局私は大阪で何をしたのだろう?)

今考えると、庭掃除だけだったような気がする。


美紀ちゃんのお祖父さんが、誘拐された娘を帰って来ると信じて丹精した庭。

ピロティにあった木製のブランコには愛が溢れていた。

私はその庭で花をいっぱい育てたい。
陽菜ちゃんには悪いけど、大阪で暮らしたい。
そう思ったんだ。





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