ラブバトル・トリプルトラブル
 そう言いながら私の顔をじろじろ見てる直樹君。


「それにしても中村さんらしい」


「ん、何がですか?」


「住所も電話番号も聞かなかったなんてね」


「あっ、そうだ」
私は慌てて携帯を取り出した。




 「直樹君ありがとう」

私は感謝の言葉を繰り返しながら携帯で陽菜ちゃんに電話した。

でも陽菜ちゃんは出てくれなかった。


「陽菜ちゃんはきっと電源を切っているんだ」
思わず不安が口に出た。


「引っ越ししてる最中かもしれないよ。忙しくて電話に出られないのかも?」


「うん、きっとそうだ。もしかしたら……、今なら会えるかも知れないね?」

私は俄然勢い付いた。


「よし、もう一度頑張ってみるか」

直樹君が言ってくれる。
私はその言葉にハッとした。


そして……
世界一優しい旦那様に巡り逢えた幸せに心の底から震えていた。


「その前に彼処で少し休もうか?」


「わぁ、素敵な椅子がある」
直樹君の指を差した先には可愛い椅子があった。
私達は早速階段の道を上がって行った。
でも其処は美容院だったのだ。
私達は何事も無いような振りをしてその道を上がって行った。




 もう夕刻近くなって、住宅街に明かりが灯り始めた。


その時、目の前に素敵なデザイナーズ住宅が現れた。


「わぁ、素敵。あ、此処にもコンテナ車がある」

私は早速荷物の依頼者が中川陽菜ちゃんではないか確かめた。

これがダメならもうアウト。
大君や秀樹君と約束した時間が迫っていた。


「あのー、この荷物中川陽菜さんの……」


「いいや、違うよ」

私の質問をもろくに聞きもしないで業者はつっけんどうに言った。


「仕方ない、時間だから行くよ」

直樹君の言葉にハッとして携帯を見たら、もう約束の時間に近くなっていた。

後ろ髪引かれながらその場所を離れた。


「ごめん。さっき気が付いた。あのコンテナ車はあの家に来た訳じゃないらしいよ。その前のアパートで手を振っていた人がいたから……」


「えっ、それを早く言ってください。私てっきり彼処だと思ってました」

私はその時吹っ切れていた。


「ごめんね陽菜ちゃん」
そう言いながら代官山への坂道に目を向けた。
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