ラブバトル・トリプルトラブル
 忙しい朝はキッチンカウンターでの食事。
でも夕食はローテーブルでのんびり会話を楽しみながら。
それが浅尾家のライフスタイルだった。

そのローテーブルは昔のちゃぶ台のように折りたたみ式になっていた。

必要な時に出して、トレーニングの時は片付ける。

小さい時は勉強机やお絵かき台にもなった。
珠希は本当にアイデアが豊富な人だった。


それらを継続していること。

家族を一番大切に思っていること。


美紀は自分がどんどん珠希に近づいているように思えてならなかった。




 やっぱりご馳走が気になるらしく、階段の下部から台所を見ていた秀樹。


(パパ早く帰って来てよ。美紀が可哀想だよ)

自分のことは棚に上げ、玄関に目をやった。
玄関の外がやけに明るかった。




 (何だろう?)

秀樹は少し玄関を開けてみる。


目を凝らして良く見ると、家の前の道には正樹の車が止まっていた。


秀樹は不思議に思い、そっと家を抜け出した。

遅くなると電話をしてきた正樹が家の前にいる。
お腹を空かした秀樹は、正樹に早く家に入って欲しかったのだ。

木の陰から様子を伺った。


もしかしたら車の中で倒れているのかも知れない。

心配かけたくないから車の中で休んでいるのか?

秀樹はあれこれ考えあぐねていた。




 車の中には正樹との沙耶がいた。


「そこを何とか。彼女はあなたの大ファンで」
沙耶の声が漏れてくる。

秀樹は悪いと思いながら聞き耳を立てた。


「だから、その話はお断わりして下さいとお願いした筈です。私はまだ再婚する気は」
正樹は困り果てていた。


「姉が亡くなってもう五年になるのよ。いつまでも忘れないでいてくれるのは嬉しいんだけど」




 (ん? もしかしたらお見合いか?)

秀樹は聞き耳を立てながら勘ぐった。


「あいつには苦労ばかりかけて」
正樹は俯いた。


「そうよね、お姉さんったらお義兄さんのことばかり考えていたもんね。鬼門の玄関だから購入を諦めほしかったのに……」

沙耶は泣いていた。


「あの家が姉の命を奪ったと私は思っているのよ」


「だから対処法の白い花と盛り塩を珠希は欠せなかったのに……」

正樹のその言葉を聞いて秀樹は玄関にある白い花を思い出していた。


(あ、だからか? だから美紀は何時も早起きをして白い花を飾っていたのか?)

秀樹はその時、美紀に背負わされた十字架の重さを知った。




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