ラブバトル・トリプルトラブル
「へー珍しい」
美紀の傍で何かをメモっていた後輩が言った。
「確か、カーブは封印していたはずなのに」
その言葉を聞いて、美紀は鳥肌を立てた。
八月十九日。
お盆は明けたけど、陽射しは刺すように痛い。
その中で……
美紀は泣いていた。
秀樹の苦労を……
秀樹の傷みを知っていたからだった。
「兄は悩んでいました。『外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまう』って言いながら……」
「そう言えば……、『俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだ』って言ってましたね」
その後輩の言葉に美紀は愕然とした。
「あっ、申し遅れました。私野球部でマネージャー見習いしてます」
後輩は手を差し出した。美紀はそっと握手をした。
「やったー!!」
その言葉に美紀は目を丸くした。
「だって美紀先輩、ミス松宮だもの」
「ミス松宮?」
「一年生で人気投票したのです。女子の憧れナンバーワンでした!!」
「えっー!? そんな」
美紀は嬉しい反面困惑していた。
自分で本当に良かったのだろうかと思いながら……
「男性は秀樹先輩と直樹先輩。同票でした。双子……、あっごめんなさい。三つ子の全員トップだったんです」
双子を三つ子と訂正した後輩の発言を聞きながら美紀は、直樹から聞いた忍冬を思い出していた。
「忍冬って知ってる? 花が二つ同じ花弁から咲くんだけど……それを『俺と兄貴の花だ』って言ってたの」
「あっ、その花を好きな人なら知ってます。近所に住んでいた中村紫音(なかむらしおん)さんって言う先輩です。確か、亡くなられたお父さんが大好きな花だったとか?」
美紀はふと彼女手元を見た。
何やら訳の判らないマスが書かかれていた。
「あっ、これはスコアブックって言います。野球の流れを記しておく物です。記憶より記録が大切らしいです」
「記憶より記録?」
「記憶って言うか、思い出は人それぞれで違いますが、これはそれを思い起こさせる記録なのではないでしょうか?」
彼女はそう言いながらもせっせと鉛筆を動かしていた。
「スコアブックには早稲田式と慶応式があるらしいけど、今の支流は早稲田式なのよ」
「ふーん、そうなんだ」
美紀は試合を応援しながらもそのスコアブックが気になって仕方なかった。
早稲田式も慶応式も美紀には解るはずがない。
それでも興味が沸いていた。
美紀の傍で何かをメモっていた後輩が言った。
「確か、カーブは封印していたはずなのに」
その言葉を聞いて、美紀は鳥肌を立てた。
八月十九日。
お盆は明けたけど、陽射しは刺すように痛い。
その中で……
美紀は泣いていた。
秀樹の苦労を……
秀樹の傷みを知っていたからだった。
「兄は悩んでいました。『外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまう』って言いながら……」
「そう言えば……、『俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだ』って言ってましたね」
その後輩の言葉に美紀は愕然とした。
「あっ、申し遅れました。私野球部でマネージャー見習いしてます」
後輩は手を差し出した。美紀はそっと握手をした。
「やったー!!」
その言葉に美紀は目を丸くした。
「だって美紀先輩、ミス松宮だもの」
「ミス松宮?」
「一年生で人気投票したのです。女子の憧れナンバーワンでした!!」
「えっー!? そんな」
美紀は嬉しい反面困惑していた。
自分で本当に良かったのだろうかと思いながら……
「男性は秀樹先輩と直樹先輩。同票でした。双子……、あっごめんなさい。三つ子の全員トップだったんです」
双子を三つ子と訂正した後輩の発言を聞きながら美紀は、直樹から聞いた忍冬を思い出していた。
「忍冬って知ってる? 花が二つ同じ花弁から咲くんだけど……それを『俺と兄貴の花だ』って言ってたの」
「あっ、その花を好きな人なら知ってます。近所に住んでいた中村紫音(なかむらしおん)さんって言う先輩です。確か、亡くなられたお父さんが大好きな花だったとか?」
美紀はふと彼女手元を見た。
何やら訳の判らないマスが書かかれていた。
「あっ、これはスコアブックって言います。野球の流れを記しておく物です。記憶より記録が大切らしいです」
「記憶より記録?」
「記憶って言うか、思い出は人それぞれで違いますが、これはそれを思い起こさせる記録なのではないでしょうか?」
彼女はそう言いながらもせっせと鉛筆を動かしていた。
「スコアブックには早稲田式と慶応式があるらしいけど、今の支流は早稲田式なのよ」
「ふーん、そうなんだ」
美紀は試合を応援しながらもそのスコアブックが気になって仕方なかった。
早稲田式も慶応式も美紀には解るはずがない。
それでも興味が沸いていた。