ラブバトル・トリプルトラブル
「汚いな」
ベンチに入るなり、直樹が愚痴をこぼす。
「こんなの当たり前だ。みんな此処に勝つために来ているんだよ。ああやって、ピッチャーにプレッシャーを掛けるんだよ。もっと酷い手を使うチームもある。だからと言って、みんながみんな喜んでやっている訳じゃないんだ」
コーチは意味深けにそう言いながら、直樹の肩を叩いた。
「秀に……イヤ直……、いいか直、秀を頼むぞ」
直樹にはコーチの気持ちが解った。
秀樹が心配でならないのだ。
「任せてください」
直樹は胸を張った。
相手の高校も、汚い手ばかり使って勝って来た訳ではない。
ただ、調子に乗ると怖い投手を潰しに掛かるのだ。
それは秀樹だから、敢えて出したプレーだった。
ツーシームだけだと思われていた秀樹に鋭いカーブが存在していた。
その上、研究し尽くしたたはずのストレートの威力が違ったのだ。
だからみんな、イヤでも監督の指示に従うしかなかったのだ。
それでも秀樹は持ち直し、最後まで投げ抜いた。
結果は三対一だった。
最初に高校球児らしからぬプレーで得点されただけで抑えられたのだ。
でもそれは、キャッチャーの直樹のみ知る事実だったのだ。
美紀は後輩に、一イニングでの打者のプレー内容を聞いた。
どう見ても、秀樹が納得していない感じだったからだ。
「私も良く判らないんだけど、多分……でもああ言う汚い手を使う人が甲子園に出場出来ること自体信じられないけどね」
そう言いながら、膝に消しゴムを置いた。
「これがベース。この横に立っていた人が体を移動させる訳。ホンの少しでストライクゾーンが変わるの。だからボールの判定だった訳ね」
「それじゃ秀ニイは?」
「完璧なストライクだったはずよ。だからあんなに悔しがったのよ。その後のボークも、打席を外した振りをして誘ったのよ」
「酷い……」
「あんまり誉められたプレーじゃないわね。でも秀樹先輩偉いわよ。その後見事に立ち直ったもの」
「きっと直ニイが支えたのよ」
美紀はそう言いながら泣いていた。
納得出来ないプレーに負けた秀樹。
お調子者だからこその洗礼を受けて、きっと自分を責めていると美紀は思っていた。
ベンチに入るなり、直樹が愚痴をこぼす。
「こんなの当たり前だ。みんな此処に勝つために来ているんだよ。ああやって、ピッチャーにプレッシャーを掛けるんだよ。もっと酷い手を使うチームもある。だからと言って、みんながみんな喜んでやっている訳じゃないんだ」
コーチは意味深けにそう言いながら、直樹の肩を叩いた。
「秀に……イヤ直……、いいか直、秀を頼むぞ」
直樹にはコーチの気持ちが解った。
秀樹が心配でならないのだ。
「任せてください」
直樹は胸を張った。
相手の高校も、汚い手ばかり使って勝って来た訳ではない。
ただ、調子に乗ると怖い投手を潰しに掛かるのだ。
それは秀樹だから、敢えて出したプレーだった。
ツーシームだけだと思われていた秀樹に鋭いカーブが存在していた。
その上、研究し尽くしたたはずのストレートの威力が違ったのだ。
だからみんな、イヤでも監督の指示に従うしかなかったのだ。
それでも秀樹は持ち直し、最後まで投げ抜いた。
結果は三対一だった。
最初に高校球児らしからぬプレーで得点されただけで抑えられたのだ。
でもそれは、キャッチャーの直樹のみ知る事実だったのだ。
美紀は後輩に、一イニングでの打者のプレー内容を聞いた。
どう見ても、秀樹が納得していない感じだったからだ。
「私も良く判らないんだけど、多分……でもああ言う汚い手を使う人が甲子園に出場出来ること自体信じられないけどね」
そう言いながら、膝に消しゴムを置いた。
「これがベース。この横に立っていた人が体を移動させる訳。ホンの少しでストライクゾーンが変わるの。だからボールの判定だった訳ね」
「それじゃ秀ニイは?」
「完璧なストライクだったはずよ。だからあんなに悔しがったのよ。その後のボークも、打席を外した振りをして誘ったのよ」
「酷い……」
「あんまり誉められたプレーじゃないわね。でも秀樹先輩偉いわよ。その後見事に立ち直ったもの」
「きっと直ニイが支えたのよ」
美紀はそう言いながら泣いていた。
納得出来ないプレーに負けた秀樹。
お調子者だからこその洗礼を受けて、きっと自分を責めていると美紀は思っていた。