ラブバトル・トリプルトラブル
 「あっそうそう。ライナーが一本棒。丸の下半分なのがゴロ。上半分なのがフライね。三者凡退はね。一番バッターは打つには打ったけどサードでゴロを捕球され一塁でアウト。菱形のⅠは、第一打者なの。第二がⅡ第三がⅢって訳です。右下に五ー三って書いて、五の下に下半分の丸がある訳ね」


「じゃあこれも同じだからサードでゴロを捕球され一塁でアウトってことですね。でもその下にスラッシュが二本あるけど」


「ああ、これでイニング終了ってこと。つまりスリーアウトです」


「スリーアウトで三者凡退か……」

美紀はそう言いながら、ずっとスコアブックを眺めていた。

秀樹と直樹の苦しみがその中に凝視されているような感じがして……




 「それともう一つ聞いてもいいですか? さっき秀ニイの取られたボークのことですが?」


「解り難いですからね」
そう言いながら彼女はスコアブックに挟んであった紙を取り出した。


「ボークとは塁上にランナーがいる時のピッチャーの反則球ですね、審判が相手を欺く行為と判断した場合にも取られるそうです」


「相手を欺く行為?」


「ピッチャーの意図を感じて取るみたいです」


「そんなー。秀ニイが悪い訳じゃないのに……」


「相手側が上手だってことですよ。よっぽど練習したのでしょうね」


「何か辛いですね。みんなの頑張り目の当たりにしてきた者としては……」

美紀はそれ以上何も言えなくなった。


見上げた空には太陽が輝いていた。

松宮高校の甲子園挑戦は終了した。
美紀は、勝ちチームがこれ以上ピッチャーを苦しめないことを太陽に願った。


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