好きだったよ、ずっと。【完】
「朱里から、何も聞いてないのか…?」



間宮は、不思議がるように首を傾げた。



「いや…。エッチはしなかったらしいな」



「あぁ、エッチはなかったな」



……。



ほんの少しだけ、期待してたんだ。



朱里とは何もなかったって。



でも、そんな甘いわけないよな。



「まぁ…、あれだ。あの日、朱里は自分を見失ってたっていうか…」



自分を見失ってた、か…。



「木ノ瀬のこと、本気で忘れようとしてたよ」



「え」



「だから、最初は俺も本気で忘れさせてやろうと思った。でも、できなかった…」



間宮は一瞬だったが、苦しそうな顔をした。



「そうか…」



これ以上、俺は何も聞けなかった。



どこまでやったんだ、とか。



聞いたって、良いことないしな。
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