好きだったよ、ずっと。【完】
「だから…。キス以上のことはしてないから、安心しろ」



間宮って、こんなイイ奴だったか?



キス以上のことはしてないなんて。



朱里の表情、態度を見たら分かる。



あれは、キス以上のことがあったはずだ。



俺を騙そうとか、間宮はそんな奴じゃないはず。



「…そうか。間宮が言うんだから、そうなんだろうな」



ウソだと分かるのに、何も言えない。



嫉妬で真っ黒な俺の心。



けど、間宮の言葉にスッキリする自分もいて。



電話じゃなく、ここに来て良かったとも思えた。



そして少し落ち着いたら、無性に朱里に会いたくなった。



朱里も俺に会いたいと思ってくれているんだろうか…。



「早く行ったら、どうだ」



「は?」



間宮の言葉に、眉を寄せた。



「朱里に会いたいって、顔に書いてる」



「なっ…」



俺…、顔に出てたかっ!?



「図星か…」



「あ?」



「ただの、あてずっぽうだ。ほら、早く行けよ」



この野郎、こいつやっぱ嫌な奴だ。



「珈琲おごれ、バカヤロウ」



そう言い残し、少し温くなった珈琲をグイッと飲んで俺は店を出た。
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