好きだったよ、ずっと。【完】
「朱里、何か食べたいものは?」



それでも、わたしに聞いてくれる。



「ううん、大丈夫」



わたしが首を横に振ると「かしこまりました」と、店員さんは出て行った。



「あー、今日も疲れたなー」



そう言ってネクタイをちょっと緩めて少し長めの髪を掻き上げる。



長めと言っても短髪より、ちょっと長いだけで肩まではさすがにない。



春夜の仕草、一つ一つに目が奪われる。



それでもあまり凝視しないように、チラチラ見てるつもり。



「うん、疲れたねぇ…。って、それよりやめてよね!」



「んー?」



ビールを飲みながら目線だけ、こっちに向けた。



「だから、その、資料室でのよ…」



春夜は少し考えた後に「あぁ」と、ビールを置いて言った。



「だって朱里の体柔らかいし、心地良いんだよなー」



なんて、わたしの心を乱すようなことをサラリと言うんだ。
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