好きだったよ、ずっと。【完】
「……、わたしは大丈夫ですから。課長は、戻ってください。お先に……」



「いや、俺が送るよ」



「は?」



「こんなオトコに任せて送り狼にでも、なられたら困るからな」



「え、いや、でも……」



春夜、笑ってない。



これは、マジで春夜が一緒に出るパターン…?



でもそうなったら、岡田くんと中村さんに変に思われるよね…?



「あー、そうですか。じゃ、朱里。上司に送ってもらえよ。俺、帰るわ」



「え、ちょっと!待って、聡」



わたしが声を掛けると、聡は一度振り返った。



「あ、そうそう。朱里の上司さんも送り狼にならないように、気を付けてくださいね」



片方の口角を上げ、聡は店を出て行った。



「よし」と春夜は一言呟き、後ろにいた岡田くんを手招きして呼んだ。



なにが、「よし」なんだか…。



岡田くんが走ってくると、中村さんも一緒に付いて来た。



「岡田くん、前田のお友達ね用事があるみたいなんだ。だから俺が、前田を送るから。みんなに伝えといてくれるかな?」



「は、はいっ」



岡田くんは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに返事をした。



「あ、あの!課長!!わたしも、課長に送ってもらいたいです!!」



空気をよんだ岡田くんに対して、全く空気のよめない中村さん。



まぁ、好きなんだもんね。



「課長、わたしよりやっぱり彼女送ってあげたほうがいいんじゃ……」



「悪いな。前田が心配なんだよ。岡田くん、中村さんのこと頼んだよ。じゃ、前田行こうか」



「え、ちょ、かちょ…」



わたしの言葉なんて全て無視で、春夜はわたしの肩を抱き外へと出た。



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