好きだったよ、ずっと。【完】
「ちょい、待て」



「は、なして!!」



急に腕を掴まれ、春夜が止まるもんだから自然にわたしも止まった。



春夜を睨み付ければ、片手を上げ1台のタクシーが止まった。



「ほら、早く乗れよ」



「やだっ、離して!!」



言うことを聞かないわたしを、春夜は無理矢理押し込めるように乗せた。



「お前な…。勘違いされてんだろ」



その言葉に、ふとタクシーの運転手を見れば疑いの目を向けられていた。



え、誘拐か何かと間違えられてる…?



「あっ、あの…。喧嘩中な、だけです…」



小さく呟くように言えば、「若いってイイですなぁ」と、50代くらいのオッチャンは笑った。



春夜が行き先を言い、車は走り出した。



行き先は、春夜の家。



走ってる途中、ずっとわたしは窓から見える景色を、ただ見つめていた。



そして、いつの間にか家に着いたらしくオッチャンは、「仲直りしてくださいね。ステキな夜を…」、そう言って夜の街へと走って行った。
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