好きだったよ、ずっと。【完】
再び腕を引かれ、渋々春夜の部屋に入った。



「さて、ステキな夜にしようか?」



「バカじゃないの」



ニッコリ笑う春夜の言葉を、バッサリ切り落とす。



「はぁ…。なぁ、朱里」



春夜は、わざとらしく盛大な溜め息を吐いた。



「なによ」



「もう、限界だ。俺たちのこと、みんなに言うぞ」



さっきまでのふざけた春夜はいなくて、まじめな顔で、声で言った。



「どうして隠す必要があんだよ。岡田に彼氏立候補されて、もう我慢できねぇ」



「……だって。春夜、人気あるんだもん…。結婚するなんて、付き合ってるだなんて怖くて言えない…」



「はぁ?あのなぁ、俺に人気があるとか、そんなん知らねぇけど俺はお前しか見てない。それくらい、分かんだろ?」



分かるよ、分かるけど…。



「なぁ、お前。仕事辞めろよ。辞めて、専業主婦になれ」



「なに…、わたしに働くなって言うの!?」



「そんなこと言ってないだろ。朱里が俺の傍で働きたいなら、いいけど。お前ん中で、何か思ってることがあんだろ?好きなほうでいい」



「専業主婦……」



本当は、一緒に働きたい。



でも、いちいち嫉妬なんかしてたら仕事にならない。



その分、春夜から離れていれば気になるけど、イライラはしないはず…。
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