好きだったよ、ずっと。【完】
「あぁ。いってらっしゃいって、言ってほしい。お帰りって、言ってほしい」



「……専業主婦。なっちゃおうかな…」



せっかく慣れた仕事だったけど、仕方ない。



これは、わたしの気持ちの問題だ。



「あぁ。ちょっとずつでいいから、引き継ぎしとけ」



「……うん」



少し、ほんの少しだけ重たかったモノが楽になった気がした。



「よし、じゃぁ。ステキな夜にするか」



片方の口角を上げた春夜の、鼻を思いっきり摘んだ。



「テメッ、なにすんだよ」



暴れる春夜は、少し可愛かった。



「中村さんのこと、可愛いって思ったでしょ」



「はぁ?なに言ってんだよ。可愛いのは、朱里だけだっつーの」



「ウソばっかり。声が浮かれてた」



「浮かれてない」



「浮かれてた!!」



叫ぶように言えば、春夜は何も言わなくなった。
< 263 / 267 >

この作品をシェア

pagetop