好きだったよ、ずっと。【完】
「……、シャワー浴びてくるわ」



春夜は一言、そう言うとわたしの目を見る事なく行ってしまった。



春夜がいなくなった部屋に、ポツリ1人。



「なにやってんだろ、わたし…」



こんなことしたかったわけじゃないのに。



独り言を言えば、ポロっと涙が頬を伝った。



そこからどんどん止まらなくなった涙を、両手の甲で拭いた。



この前の些細な喧嘩だってそうだ。



わたしの単なる嫉妬から、喧嘩になった。



付き合ってるのは、わたしなのに春夜がオンナに優しくしてるのを見るだけで苦しくなる。



プロポーズされて、結婚が決まってるからって必ず結婚するとは限らない。



単なる約束にすぎないんだ。



だから不安になるんだよ…、春夜がいつかわたし以外のオンナを見るんじゃないかって。



<ごめんね、春夜。怒らせるつもりはなかったの。中村さんがベッタリくっ付いてるから、嫉妬した。子供じゃないのに、ごめんなさい。今日は帰るね。おやすみなさい>



鞄からメモ帳を取り出し、素直な思いを書いてテーブルに置くと部屋を出た。



ふらふらと、夜の道を歩く。



そういえば、この辺って歩いたことなかったかも。



いつもタクシーか、春夜の車だったから。



特に何か建物があるわけじゃない。



ただの、住宅街。



星が今日はすごくキレイで、車1台走っていない静かな夜。
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