好きだったよ、ずっと。【完】
「はぁ…」



春夜がいなくなり、わたしは溜め息を吐いた。



抱きしめられるのは今日が初めてではない。



わたしが資料室に行くと、たまにあとからやってきて抱きしめられる。



だけど、わたしたちは付き合っていない。



友達…。



友達なら、抱きしめたりしないだろう。



友達以上、恋人未満。



きっとこれが合ってる。



春夜にとって、わたしはどういう存在なんだろう。



少なくとも、わたしは好きだ。



ずっと、大学時代から。



でも自分の気持ちを伝えることはできなかった。



そして、これからも言うことはないだろう。



「あ、時間マズイっ!」



わたしは慌てて資料室を出た。
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