好きだったよ、ずっと。【完】
こんなに木ノ瀬を想ってるのに、抱いちまっていいのか?



俺は、もう一人の自分と会話をする。



でも、朱里を壊したい気持ちも確かにあって…。



「春夜は、関係ない」



そう言った朱里の顔は、明らかに曇ってて。



「ふーん。やっぱ、エッチはなしな」



だめだっ、やっぱり俺には抱けねぇ。



「えっ、なんでよっ。わたし…」



「そんな好きな男がいる女、俺には抱けないから」



なんて格好良く言ってみたけど、やっぱり朱里の乱れた姿は見たくて。



「だから」



俺の言葉に朱里は首を傾げた。



「朱里だけ、気持ちよくなれよ」



俺が触れると、朱里は声を上げた。



「こんなになって。そんなに興奮した?」



「して…、ないっ…」



ニヤリと笑い、朱里の顔を覗き込んで聞けば、この返事。



「へぇ。なら、どうしてこんなになってんの、ん?」



「い…、えないっ…」



「あっそ。じゃぁ、やめた」



可愛くない言葉に、俺は朱里から手を離した。



「やっ…、さとるっ…」



朱里は俺の腕を掴み、瞳はさっきよりも潤んでいた。



「なに。俺、嘘付く子好きじゃないんだよね」



「……っ」



俺の言葉に朱里は、目を逸らし顔を赤くさせた。



そして、一言。
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