好きだったよ、ずっと。【完】
「もういい。春夜とは話したくない」



「なんだよ、それ」



「いいから、腕離して。痛い」



「痛いって、軽く握ってるだけだろ」



幸い、客は俺たち4人しかいなくバイトの子は奥に引っ込んだのか、マスターだけが俺たちのことを静かに見ていた。



「うるさい!いいから、離しなさいよ!!」



「やだ。お前が理由言うまでは離してやらない」



「なんなのよっ…、もっ…、お願いだから…、これ以上わたしの中に…、入ってこないでよ…」



「朱里…?」



朱里は崩れるように近くにあったテーブルに手を付き、しゃがみこんだ。



「泣いてんのか…?」



俺はもう片方の手で朱里の頬を伝う、涙を掬おうとした。



でもそれをバシッと、はねのけられ。



「だからこれ以上、触れないでよ!優しくなんかしないでよ!!」



朱里、本当にどうしたんだよ?
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