好きだったよ、ずっと。【完】
「なぁ、朱里。俺、お前に傷つけるようなこと…、したよな」



自分で言って、途中で思い出した。



「悪い。あんなこと言うつもりなかったんだ。俺、お前に甘えてた」



ごめんな…。



「俺、最低だよな。28なのに、俺だけ大人になってないよな…」



朱里は、あれからずっと俯いたまま俺だけが喋っていた。



「わたしだって…」



「ん?」



小さな声で喋った朱里の声を、俺は聞き逃さなかった。



「わたしだって…、大人になれてない。あの頃から…」



「あの頃からって…、大学時代か?」



俺が聞くと朱里は、コクンとただ頷いた。
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