好きだったよ、ずっと。【完】
「ちょっ、なにっ、やだっ…、離してっ!!」



「無理。離せない」



俺は、朱里の腕をグイッと引っ張り自分の胸に寄せ抱きしめた。



「ごめんな、朱里…。俺、最低なことしてた…」



俺が謝ると、今まで腕の中で暴れていたのがピタリと止まった。



「別に、春夜は悪くない。もちろん、璃香も」



<璃香>という名前に、俺はチラリと璃香を見た。



「朱里…、大学時代から春夜のこと……」



璃香はストンと椅子に腰を下ろし、呟いた。



「ごめん…。わたし何も知らないで一人ウキウキしてた…」



そんなの、俺だってそうだ。



俺だって、何も知らないで…。



「そんなの仕方ないんじゃない?」



朱里は、俺の胸を両手で押すと離れた。
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