冬の月【短編】
そんな不安が頭に浮かんで


「絢芽。」


思わず名前を呼んでしまう、ダサい俺。
2・3歩離れた場所にいるだけなのに、それがとてつもなく遠く感じてしまう。
一番弱々しいのは、俺かもしれないな。
そう反省してしまう。


「絢芽。」


もう一度呼んで、俺のほうを見た絢芽の腕を引っ張った。
そっと抱きしめて、絢芽の額にキスをする。


「遼…?どうしたの?」

不思議そうに下から見つめられ、自分のしたことに恥ずかしく思う。


「なんでもない。」

そっと離そうとすると、今度は絢芽が抱きついてきた。


「どうした?」


聞き返すと


「遼、あったかいねぇ。」


にっこりと笑う絢芽。


そんな事されたら離したくなくなるだろ。
そう言いたいのをこらえて、絢芽を強く抱きしめる。


「あったけぇな。」


そしてそっとキスをした。
幸せそうな絢芽を見ると、俺も幸せな気分になるんだ。


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