sweet wolf





あたしは突っ立ったまま、混乱していた。

今にでも襲いかかってきそうな金獅子。

渡されたナイフ。

護身のために、ナイフまで使えって?

だけど……

金属バッドには勝てないよ。







「杏。走れ……」




蓮が耳元で囁く。




「今なら隙がある。

走って岡島にそれを……」






考える間もなかった。

反射的に飛び出し、無我夢中に春樹めがけて走った。



脚力には自信があった。

昔から。

鬼ごっこをしても、誰にも負けなかった。

あたしの取り柄といったら、これくらい。

だけど、蓮の……みんなの役に立ちたい!





< 273 / 312 >

この作品をシェア

pagetop