sweet wolf
あたしは突っ立ったまま、混乱していた。
今にでも襲いかかってきそうな金獅子。
渡されたナイフ。
護身のために、ナイフまで使えって?
だけど……
金属バッドには勝てないよ。
「杏。走れ……」
蓮が耳元で囁く。
「今なら隙がある。
走って岡島にそれを……」
考える間もなかった。
反射的に飛び出し、無我夢中に春樹めがけて走った。
脚力には自信があった。
昔から。
鬼ごっこをしても、誰にも負けなかった。
あたしの取り柄といったら、これくらい。
だけど、蓮の……みんなの役に立ちたい!