sweet wolf
遊び人狼
「なーんだ、そんなことか」
直樹はいつもの笑顔で笑っていた。
「分かってるよ。
杏ちゃんには大宮さんしかいないってこと」
「ごめん……」
あたしは直樹に頭を下げた。
直樹は、こんなガサツで馬鹿なあたしを好きだと言ってくれた。
すごく嬉しかった。
だけど、やっぱりあたしの気持ちは蓮だったのだ。
直樹を振り回しておいて、散々迷惑をかけて、この仕打ち。
なのに、直樹は笑顔で笑い飛ばしてくれる。
やっぱり直樹は神だ。
「何言ってんだよ、杏ちゃん?
杏ちゃんらしくないなぁ!」
その言葉で我に返る。
最近のあたしは比較的おとなしい。
転校してきた頃のように狼に楯突いたり、直樹を怒鳴り飛ばしたりすることなんてなくなっていた。
あたしは、既にこのおかしな学校に馴染んでしまったのかもしれない。