sweet wolf




だけど……




「蓮、ナマ派なんだ」




わざとらしくそう言う。

そして、自分の発した言葉を聞いて、さらに気分が暗くなる。

あたし、何言ってんだろう。





「馬鹿かてめぇ」




蓮は素っ気なく吐き捨て、あたしの横をすり抜ける。




ズキーン……




あたしの心が、音を立てて割れた。









蓮とはこんな感じ。

もちろん進展はないし、むしろ後退したような状態。

蓮とすることと言ったら、他愛ない無駄話くらいで、甘い言葉もキスさえもない。

あの日の蓮の言葉は嘘だったのかとさえ思える。





だけど、蓮の彼女はあたし。

それだけは公言してくれているようで。

何だか嬉しかった。





飴と鞭を使い分ける男。

それが大宮蓮なのだ。







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