sweet wolf
狼なんて忘れてやる
あたしはそのまま教室に戻った。
転校早々、授業に遅れてくるあたしを、クラスのみんなは興味深げに見た。
そんな視線をものともせず、何事もなかったかのように席に座るあたし。
「栖本、遅刻か?」
先生がそう言うものだから、
「さァーせん(すいません)」
と適当に謝っておいた。
世話焼きの直樹が、
「もうっ、何してんの?」
あきれたように言うから、
「めんご」
わざとそう言ってやった。
元はといえば、あんたの兄貴が悪いんじゃん。
心の中でつぶやくあたしに、
「53ページだよ」
出た、直樹のお節介攻撃。
反抗する元気もなく、
「はいはい」
仕方なく教科書を開けた。