sweet wolf
「杏ちゃん!」
不意に呼ばれ、どきっと飛び上がる。
杏ちゃん!?
その呼び方に反応してしまう。
鼓動が張り裂けそうに速い。
もしかして……
もしかしたら……
ゆっくりと視線を移す。
そこには、あの子がいるかもしれない。
弱いあたしを、守りにきてくれたのかもしれない。
だけど……
そこにいる彼を見て、あたしは愕然とした。
「直樹……」
名前を呼ぶと同時に、軽い失望に駆られる。
「紛らわしい呼び方するなよ」
そう言うと、
「紛らわしい?」
怪訝な顔をする。
あー、もう!!
直樹は何も分かってないんだから!!