sweet wolf
直樹は、あたしの手をぐいぐい引いて進んだ。
周りの人が驚きと興味の目でこっちを見るが、直樹は大して気にもしていない様子。
それよりも、なぜかやたら急いでいる。
どこへ行く気だろう。
もしかして……
新種のいじめ!?
「ちょっと、直樹!!」
耐え切れなくなってあたしは叫び、直樹の手を振りほどいていた。
「説明もなしに、あたしがのこのこついてくとでも思った?」
思いっきり睨んでやると、直樹は「ごめん」とばつの悪そうな顔をする。
どうやら、直樹は本当に性格がいいか、弱いかどっちからしい。
だけど、直樹は言う。
「何としても兄が杏ちゃんを連れて来いって言うから……」