後追い心中 完
好きなんです。大好きなんです。ただ、それだけだったんです。
伝えることは出来ませんでした。自分がそれに値する人物でないことも、自分がただ臆病だっただけというのも、どちらにも要因はありましたが。
彼の隣にいることも叶いませんでした。きっと彼の隣になんて並べば、わたしは色あせて見えたでしょう。それを較べられることが恐すぎたのです。
それでも、わたしは彼が好きなんです。彼がいないこの場所では、もう1分1秒も、生きていたくはないんです。
だから、どうか死なせてください。これがただのわがままだと、知っているけれど。
目的の近くの駅に着くと、高校の最寄り駅までの切符を買った。ちょうどホームに滑り込んできた電車に乗り込めば、車内はがらがらに空いている。一番近くにあった席に腰を下ろすと、まるでそこに沈み込んだような錯覚に陥った。それほど身体が重くて仕方ない。
もう、指一本すら、動かしたくないくらいに。
気だるげに首を回して窓の外を眺めれば、泣きたいくらいに懐かしい景色がそこにはあって。
3年間、特に何の執着もなく眺めていたそれは全く変わっておらず、まるでわたしを受け入れるように優しかった。そしてそのまま、浸るように高校生活を思い出す。
あれもあった、これもあった。けれど思い出せる想い出は数が少なくて、そして必ずどこかに蓮田くんの姿があった。
自分の高校生活がいかに彼を中心としていたのか知ってしまい、ぎゅううっと心臓を鷲掴みにされたような痛みが襲う。
蓮田くん、蓮田くん、蓮田くん。辛いことがあったとき、そう心の中で唱えるだけで、頑張れる気がしていた。お守りみたいだった。