night rainbow
「やめてってば、それ。恥ずかしい。」
「おまえさ、世間体気にするほど、繊細な心持ってないだろ。」
問題ない、と言って雪斗はくるりと背を向けた。
なんと失礼な。私の家に毎朝変なノックしてる変質者がいるって噂されたら、私だってさすがに恥ずかしい。そこまで図太い人間じゃないわ、なんて心の中で悪態をついた。
「もう、いい。学校いこ。」
私はすね気味に言って、雪斗に構わず歩き出す。
すると雪斗は、少しぽかんとした後、体を揺らして笑った。
「ごめんって。気ぃつけるから。」
毎朝そうやって言うくせに、直してくれない。
さり気なく、私の手に温もりを絡めてくるのも、いつも通りの朝だった。