劣り火
ニュースが終わりに近づいてきて、その証と言わんばかりに
先ほどまで真面目な表情でニュースを読み上げていたアナウンサーが、笑顔とトーンを少し高めた声で
どこかの動物園で生まれた3つ子の虎の赤ん坊のことを報じる。バックには陽気なボサノバのような音楽。

そして、ニュース番組の本当の終わりにもう一つ、青い画面に白文字の画面が映る。
アナウンサーの声もまた硬く、表情をなくした。


「番組の最後に、今朝発表されました『出没警戒地区』をお知らせします。こちらの地区にお住まいの方は
外出をされる際には厳重な警戒を行ってください。また、ここに挙げました地区への無用な訪問は絶対にしないでください。
詳しい情報につきましては……」

テレビ画面一杯に北から南まで、様々な市や街の名前が並ぶ。その一角の地区が目に付くと
静禍は小さく舌打ちをした。


「……また今日も俺のところじゃねえか」


その時、枕元で充電していた携帯電話の着信音が聞こえた。まるで静禍の呟きを聞いていたかのようなタイミング。
画面など見なくとも、それがどこからの着信なのか静禍には分かっていた。

< 2 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop