together
リビングには、コーヒーメーカーから寝ぼけた頭をスッキリ覚ます様な、苦々しい香りが漂っていた。



うっっぷ……
いつまでたってもこの匂いには慣れないよ……(泣)



私にとって『匂い』は、大切な情報だけど、これだけ部屋中にコーヒーの香りが漂ってたら使いようにならない。



とりあえずステッキで、机とイスの位置を確認。



座るところまで一人で行うのが私。



不便だけど、毎日同じことをしてると慣れてくるんだよ。



フカフカした私専用の椅子に座って直ぐさま、前から声が聞こえる。



「美砂ちゃ~ん
ハイ、今日は……ハムエッグぅ~~(ピシッ)」



語尾を最近人気のお笑い芸人風に、低く喋るし~ちゃん(34歳)。



いつまで若くいるつもりなんだろう?



「ありがとう。いったただきまーす」



手渡しされたハムエッグを一口頬張る。
そこへ……



ピンポーン



無機質な機械音が聞こえて来た。



「ハイは~い」



し~ちゃん(学生婚)がインターホンにも出ずに、直接玄関に向かう。



別に不用心なわけじゃない



ただの……毎日の日課



『彼』が来てくれた……



私は、いつの間にか、ハムエッグを丸々全部口に詰めていた……



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