☆マリッジ☆リングス☆
「新婚さんですか?」馴れ馴れしくも、女は話をすすめた。

「いえ・・・」聡はそう答えると

「あ・・・でも素敵な結婚指輪。」

そういうと、聡の左手を手に取り、見つめた。

「よく手入れしているんですね。まだピカピカ」

「そんな・・・もう結婚して、そうだな・・・もうすぐ10年」

「えーーー。見えないです。お若いですし。」

「え?俺が?」

「はい!」

聡はなんだかニヤケてしまい。でも正気を取り戻した。

「すみません。もう会社行かなきゃ。」

「あっ・・・すみません。でも、よかったらご検討ください。」

保険のパンフレットをカバンから取り出すと聡に手渡した。

「では・・・・」そう言うと

女は人混みの中に消えた。

「なんだったんだ・・・」聡はこの一瞬の出来事に

会社についても動揺していた。

「なんだよ・・・おまえ・・・ぼーっとして」

同僚の野田が言う。

「なんでもねーよ。」聡はそういうと、午前の打ち合わせに向かった。

でも、なんだかあの感触が妙に残る。

見知らぬ女性に手を握られるなんて

刺激的で印象に残る。

「なんだよ。・・・これ・・・」

何度も自分の手を見つめては想う・・・

「あの女が気になってしょうがない。」

田島 芽衣って保険セールス員

これは運命なのか?

それを決定づけることは

それから間もなく起きた。
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