☆マリッジ☆リングス☆
昼間の社員食堂では

毎日、野田と決まって食事をしていた。

野田はまだ新婚で、愛妻弁当を持参している。

「おまえ・・・幸せそうだな。」

「まあな。」

野田は5歳年下の嫁が可愛くってしょうがない。

なんだか・・・野田の話は、はがゆくって、聡にはちょっと物足りない。

自分の家は今、赤ん坊で大賑わい。

自分の居場所なんかない。ってことに・・・また聡は落ち込んでいた。

「これ・・・お願いします。」食堂の入り口から

かん高い女の声。

「あ・・・セールスか」

社員の昼休みを利用して保険のセールスレディーが営業に来ている。

聡は、目を疑ったが・・・その日はまたとない日となり

年配のセールスレディーの隣に女はいた。

「あっ・・・朝の」

聡は野田と食堂の出口へ向かっているところに

女は聡を呼び止めた。

「あぁ・・・どうも」

「この会社だったんですね。」女は朝の笑顔でまた微笑む。

「か・・・可愛い」

聡は慌てて、朝もらっていた名刺をジャケットの内ポケットから取り出した。

「田島さんですよね。」

「はい。」

聡は、野田を先に部署に戻し

話始めた。

< 11 / 62 >

この作品をシェア

pagetop