☆マリッジ☆リングス☆
「パパ・・・」せいは聡が出張で家には帰っていなかったと聞かされていた。

「パパ・・・お帰り・・・」

「あぁ・・・ただいま」聡もとっさにせいに合わせて返事を返していた。

「あそぼ・・・」せいの冷たく小さな手は聡のその手を握り走り出した。

「遊んできなさい。」さゆりはそう言って2人を送り出すも

そのまなざしはピクリとも笑わない・・・。

自分に降りかかった家族崩壊って現実が今なお、突き刺さる。

一人ベンチに腰掛け、目の前の幸せそうな家族を見つめていた。

「なんでよ・・・」あんなに子育てに熱心だったさゆりは、ちょっとだけペースダウンしていた。

実の母親と一緒に住むことで、甘えていく生活。

一人になると、ふと寂しくなり・・・つい久保を求めてしまう自分に「これでいいのか。」って・・・

でも、さゆりの心は決まっていた。

「せいは自分が育てるって。

もう、誰ととか・・・ない・・・自分が母親なんだから。」

迷いながらも、聡への執着は日に日に消えて行った。

「もう、戻ってきても、私・・・無理だから。」

つい強気に言ってしまった台詞。

そんな日が来るのかわからないが、さゆりはシングルマザーを決心していた。

「おーーい。せい~」せいはとにかく足が速い。

聡はせいの後を追っかけるも、息があがるほどになっていた。

「せい・・・お父さん、これからな・・・」

聡は、せいに伝えたかったけど、

もうすぐ4才になる息子にどう伝えるべきか・・・

「しばらく逢えないかもな。」

「え・・・?どうして・・・?」

「うーーん・・・またおしごとかな。」

「そうなんだ・・・」

せいはうつむいてしまったけど・・・

「いつかえってくるの?」しきりに聞いてくる。

「うーーん・・・まだわからないな。」

「なんで・・・ねえ・・・」

「ごめんなぁ・・・・せい・・・」

親子というものは・・・

離れていても、不思議と感じるものがあるというのか・・・

せいも、聡の「逢えない」っていう空気を子供なりに感じていた。

「せい・・・行くわよ~」さゆりはせいと共に聡に別れを告げる。

「じゃぁ。あなた。お元気で。」・・・さゆりの最後の言葉。

「もう少しだけ・・・」聡はせいともう少しだけ一緒にいたかったけど・・・

「うん。ありがとう。」

そう言うと、さゆりとせいを後にした・・・
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