☆マリッジ☆リングス☆
「せいには内緒なんだからね。」

「おう、そうなのか・・・」

さゆりと聡は、入学式の会場で新入生の入場を待っていた。

「もうすぐ来るわね。」

この厳粛な雰囲気の中で

別れた夫婦はこっそりと会話する。

「ごめんな・・・」

「ううん・・・もういいの。」

さゆりは、もう指輪をしない。

聡もそれがわかって、なおさら現実を感じてた。

沢山の拍手に包まれながら

新入生は入場してくる。

「あっ・・・来た来た・・・」

凛々しかった。せいは少々緊張しているようだが

でも、なんだかすごく成長していて・・・

「お兄ちゃんになったな。あいつ・・・」聡はその姿に胸が熱くなっていた。

「うん。あなたがいなくなってから、大変だったけどね。

変わらなきゃって。私たち。」

「・・・うん。」

さゆりは無心にビデオカメラを回していた。

「せいには私からいうから、待ってて。校庭で。」

式は和やかに、クラス集合写真には

聡は写らなかった。

さゆりからそう言われて・・・

聡は一人校庭で、せいを待っていた。

「今日で最後かな・・・」

ふと、そう思う自分がいて、

だからこの一瞬を大事に

せいに会えることに胸が高まっていた。

「パパ・・・」せいはこの日も

小さいながら、全速力で聡に向かって駆けてきた。
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