☆マリッジ☆リングス☆
「おうおう・・・大きくなったな」

「うん。パパ・・・なんでなかなか来てくれないの?」

「ずっと・・・待っていたんだよ。僕」

「ごめん・・・」

せいは、すっかり大人びた会話を投げかけてくる。

「なんで・・・」

「どうして・・・?」は相変わらず多かったけど

でも、きちんと、理解できる年に確実に成長していた。

「パパ・・・もう逢えないんだ。」

「え?どういうこと?」

「ママとはね・・・・」

「じゃあ・・・約束してよ。」

せいは、急に約束って・・・

「僕のパパ・・・やめないって。」

「せい・・・」

聡は、何と言ったらいいか・・・

何にも出なかった。

そして、気づかされる。

この子の父親なんだってこと。

「ああ・・・。約束するよ。」

聡はせいと指切りを交わす。

本当に一瞬だったが・・・

その小さな小指が

妙にあったかく、そして力強い。

「もっと、アイツのこと、見て上げればよかったな・・・」

聡は今更そんな感情に苦しんだ。

したくてもできないっていう現実に

名残惜しさと

でもこんなめでたい日にしんみりしてはいけないって

「せい。小学校頑張れよ」

「うん」

「じゃあ・・・これで・・」

「ああ・・・」

さゆりはせいの手を引いて聡の元を去っていく。

「ああ・・・これで・・・」聡は2人の背中をじっと見つめては

いつまでも、手を振っていた。

一人進む桜並木は

ふんわりより

桜は

残酷にも

聡の肩に

はかなく散っていった。

どんなに季節はめぐっても

もう2人とはそれを共有できない。

春はこうして何年も

聡に思い出させる。

「そろそろ、5年生か。」

あの日から4年。

聡は芽衣と結婚することもなく

たった一人で過ごしていた。

リビングには

そこその高さまで積み重なったノートの山。

聡は日記を今でも書いていた。

それを読み返しては

気持ちを確かめていた。

聡は4年ぶりに会いに行く。

その気持ちはやっぱり決まっていた。

「待ってる・・・」

彼女は同じ気持ちで待っていた。
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