☆マリッジ☆リングス☆
「おはよう・・・」

「うん・・・」

息子との会話も弾まないまま・・・男同士の生活は過ぎて行った。

せいは学校が終わると、家には帰らず、まず、さゆりの病室へ向かう。

そこで、宿題をせっせとやり・・・さゆりとのひと時は聡には伝わらないくらい

せいには癒しの時間となっていた。

「父さんと、うまくいってる?」

「・・・・」

さゆりもまた、せいが少しだけ不安で、話を切りだしては、うまく本音を聞きだせない。

「早く、戻ってあげなきゃ・・・」そんな焦りも感じながらのせいの去った後、一人床で考えにふけっていった。

小学5年の冬

せいはもうじき冬休みに入るのと今年はクリスマスも母は不在・・・

なんだか心は寂しく、代わりに現れた・・・実の父親。

「なんだよ・・・あいつ・・・」やっぱりどこか許せない自分がいて

病院からの足取りは重い。

繁華街を歩くも

日暮れは早く、なんだか怖くなった。

「あれ・・・あなた・・・」

せいを呼び止めるのも、同じクラスの美咲の母だ。

「せいくんじゃない。早く帰りなさいよ。」

美咲の母はPTAのパトロール中でせいを見かけた。

「・・・あ・・・はい。」

黄色の通学帽子を深々くかぶり直し、せいは家路を急いだ。

家に帰っても、まだ聡は帰っていない。

冷蔵庫を開けると、レトルトのハンバーグが置いてあった。

「くそっ・・・」せいはそれを乱暴に開けてレンジでチンする。

テーブルに置手紙。

「9時には帰ります」

聡はそれをクチャクチャにまとめ、

ソースがベット付いたハンバーグの袋と一緒に捨てた。

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