☆マリッジ☆リングス☆
「私って・・・」さゆりは意識も朦朧とする中

思い描くのは、やはりせいとの時間だった。

「やだよ・・・」目を閉じたら

このまま、もう開けることができなくなるんじゃないか?っていう恐怖。

「なんで、私が・・・」散々その想いにもぶつかってきた。

答えがでないまま、また病魔は体をむしばむ。

「お願い・・・」

さゆりは最後にはそんな言葉しか出なかった。

生きたい自分へと

残された家族へ

全て、「お願い」するしかなかった。


「小林さん・・・・」医師が呼ぶも

意識はどんどん薄れてゆく。

今まで出会った人

家族





そして我が子

走馬灯のように浮かぶなんて・・・

さゆりは怖いながらも

だんだん、穏やかに・・・

「覚悟」って言葉は

こんな瞬間にもあるんだな。と

「おい、さゆり・・・聞こえるか・・・」

聡もようやく病院にたどり着いた。

「あなた・・・」

さゆりの手は冷たく・・・

握力はほぼない。

せいを握る手も

聡を握る手も

みるみるうちに凍りつき

フッっと・・・息を吸うと

そのまま、深い息を吐きながら

深い眠りについた。

「おい・・・・さゆり・・・」

聡は、さゆりの手を握り返すも

さゆりは反応しない。

医師が確認するも

心肺停止の状態だった。

「お母さん・・・」

せいはあまりの突然の母の死に、

赤ん坊のように泣きわめいた。

「うわ~ん」・・・そんな声で

どんなに泣き叫んでも、もう助ける母はいない。

「せい・・・落ち着け」聡が言えば言うほど

「うるせーーー」

せいは反抗した。

「せいちゃん・・・」駆けつけたさゆりの母は

せいを懸命になだめる。

聡はいたたまれず

さゆりから一旦離れた。

「まだ・・・これから。」そんな時期に

突然の死を迎えるなんて・・・・


クリスマスだというのに・・・・

心は、真っ暗だった。



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