真面目な彼の秘密の本性。
もう、遊び人をはじめて
約5年の月日が経ったと言える今現在。
「アンタ、私におちたでしょ?」
今、私の目の前にいるどこかイケイケな風を
装ったヤツにそう訪ねるように聞いた。
「……ッ、ごめん。本気で好きになった。」
そんな、見た目からは想像できない
小さな声を出して私を見つめる彼。
まるで、
こうなることをわかっていたかように。
まるで、
最初からこうなるシナリオを作っていたかのように。
目の前にいる彼は、
私も自分に惚れている、おちている
とでも、言うように小さな声とは逆に
顔は自信に満ちていた。
そんな、彼を見ながら
私は静かに微笑んだ。
「…そう。なら、よかった。」
「じゃ、じゃぁッ!」
「でも、私にとってアンタは玩具のようなものだから。」
パァッと一気に明るくなったその顔が、
みるみるうちに、冷めた堅い表情へと変わっていく。
__自意識過剰なヤツ…。
「私におちたならこのゲームは終了。」
“お疲れ様、負け犬さん”
私がそう言いきり、今まで以上の笑顔を向けたとき彼は慌てたように立ち去った。
「あーぁ、また次の獲物さがさないと。」
走り去った彼の背中が完全に消えたころ、
私もその場に背中を向けた。
次の獲物はどうしようかと
前に足を進めながら。
『おちたほうが、負け。』
遊び人な私の決まり文句を
心のどこかで繰り返した。