月陽
`ウ ルワシキセカイ
少女は世界が藍色に深まる中、
何をするでもなく空を見上げていた。
風が吹くと微かな秋の香りが
鼻先を掠めていく。
地面では木の枝から落ちてしまった
落ち葉たちがカラカラと乾いた音で
転がっていた。
その場に立ち尽くしたまま動こうとしない少女に、側にやってきた少年は
不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「月を…見ていたの」
少年も、少女に合わせて空を見上げる。
「綺麗だね」
「うん」
暫く二人は一つしかない月を見上げていた。
そして、少年はふと少女の方を見やる。
「今、思ったんだけど…」
「なぁに?」
「仮に、僕が月だとしたら、
君は太陽だろうなぁ…って」
その言葉に、少女は逡巡して口を開いた。
「…だとしたら、すごく寂しいな」