二重人格三重唱
 アパートを改造した上町の家に戻った薫の寝ている部屋に行く。
そして翔を抱き締める。
香には一目で翔が解った。

香は半狂乱になり翔を奪って逃げようとした。

事情を知らない薫は、香の未来のためだと思い必死に止めた。

もみ合いになり、薫が倒れる。

勢い余って薫お腹を踏みつける香。

気付いた時、薫は亡くなっていた。


香は途方に暮れながらも泣き叫ぶ翔に乳房を与えていた。

全ては自分の蒔いた種。

薫の遺体を埋めながら、香を薫として暮らして行くしかないと孝は思っていた。




 香と孝の愛の生活が始まった。

恋人を奪い、子供を奪う。

香は薫が憎くて仕方なかった。

母のお腹の中で同時に血を分けあって育った双子だったから、余計に憎んだのかも知れない。

今日まで荒んだ毎日を送らなければいけなかったのは全て薫のせいだと香は思った。

翼を目の敵にしたのは、薫として生きて行かなければならない自分の運命を呪ったからだった。

孝は薫と香を同時に愛していた。

同じ顔をした双子。
薫は真面目でしっかり者だった。

一方香はどことなく間の抜けた顔をしていた。
香はただ………
呆然と孝を見つめていたのだ。
その表情が孝には堪らなかったのだ。


そんなこんなで、薫にこんな一面もあったのかと益々惚れ込んだのだった。

だから尚更、香に殺された薫が哀れでならなかった。

香を薫と呼ばなくてはいけない残酷な運命を恨んだ。


そして又眠れなくなった。

睡眠薬を手にした時、無抵抗な香が脳裏に浮かぶ。

その快感が孝を虜にしていた。

孝は庭の片隅に立ち、そこに埋めた薫を思いながら睡眠薬強姦を遂げようとしていた。




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