二重人格三重唱
武州中川駅。
突然の翼の訪問に節子はとり乱していた。
「……ったく陽子ったら、知らせくれたら良いのに」
節子はそう言いながら、まだベットの中にいる貞夫(さだお)を起こした。
それでも、イヤな顔一つもしないで節子は翼をもてなした。
「今年はありきたりな物ばかりよ」
テーブルには御節料理。
「こんな物しかなくて」
節子はすまなそうにお雑煮を翼に勧めた。
貞夫がマジマジと翼を見ていた。
「なあにお父さん? 翼の顔に何か付いてる?」
たまりかねて陽子が言う。
「いやー。見れば見る程良い男だ。陽子が惚れ込んだだけの事はある」
貞夫のその言葉で、陽子は真っ赤になった。
慌てて隣を見ると、翼も真っ赤になっていた。
「揃いも揃って。似た者夫婦だな」
貞夫の言葉で二人はもっと赤くなった。
「まだ早いよー」
陽子はやっとそれだけ言った。
「ねえ陽子。保育園は何処に決めたの? コッチで勤めないの?」
節子の何時もの攻撃が始まった。
節子はどうしても翼を婿にしたかったのだった。
「横瀬に空きがあるの。其処で勤めたいと思っているの。出来ればお姉さんの家から通えたらなんて……」
「えーっ!?」
翼は思わず声を上げた。
確か陽子は内定を戴いたと言ってた。
翼にとっても、それはただ事ではなかった。
(親父……きっと怒るだろうな)
翼はドキドキしながら、陽子を見つめた。
「翼を彼処の家に置いておけないの」
でも……
陽子はそう言いながら泣いていた。
(口から出任せ? それでも嬉しい)
翼も泣いていた。泣きながら笑っていた。
陽子の心遣いが嬉しくて堪らなかった。
「だったら此処に来たら? 私達は構わないよ」
そう言いながら節子は貞夫に目配せをした。
「あ、あー俺も構わない」
慌てて貞夫が言った。
突然の翼の訪問に節子はとり乱していた。
「……ったく陽子ったら、知らせくれたら良いのに」
節子はそう言いながら、まだベットの中にいる貞夫(さだお)を起こした。
それでも、イヤな顔一つもしないで節子は翼をもてなした。
「今年はありきたりな物ばかりよ」
テーブルには御節料理。
「こんな物しかなくて」
節子はすまなそうにお雑煮を翼に勧めた。
貞夫がマジマジと翼を見ていた。
「なあにお父さん? 翼の顔に何か付いてる?」
たまりかねて陽子が言う。
「いやー。見れば見る程良い男だ。陽子が惚れ込んだだけの事はある」
貞夫のその言葉で、陽子は真っ赤になった。
慌てて隣を見ると、翼も真っ赤になっていた。
「揃いも揃って。似た者夫婦だな」
貞夫の言葉で二人はもっと赤くなった。
「まだ早いよー」
陽子はやっとそれだけ言った。
「ねえ陽子。保育園は何処に決めたの? コッチで勤めないの?」
節子の何時もの攻撃が始まった。
節子はどうしても翼を婿にしたかったのだった。
「横瀬に空きがあるの。其処で勤めたいと思っているの。出来ればお姉さんの家から通えたらなんて……」
「えーっ!?」
翼は思わず声を上げた。
確か陽子は内定を戴いたと言ってた。
翼にとっても、それはただ事ではなかった。
(親父……きっと怒るだろうな)
翼はドキドキしながら、陽子を見つめた。
「翼を彼処の家に置いておけないの」
でも……
陽子はそう言いながら泣いていた。
(口から出任せ? それでも嬉しい)
翼も泣いていた。泣きながら笑っていた。
陽子の心遣いが嬉しくて堪らなかった。
「だったら此処に来たら? 私達は構わないよ」
そう言いながら節子は貞夫に目配せをした。
「あ、あー俺も構わない」
慌てて貞夫が言った。