二重人格三重唱
翼と陽子は、日高家で引っ越しの準備をしていた。
三学期から堀内家から学校へ行く事になったからだった。
やはり武州中川の木村家だと、翼の学校が遠くなる。
陽子のこの意見に、節子は渋々承知したのだった。
甲斐甲斐しく陽子が働く。
「いい娘だ。やっぱり翼には勿体無い」
孝は陽子をジロジロ見ていた。
「そこで何してるの? 全く油断も隙もない」
薫は呆れ果てて、孝を追い払った。
それでも孝は陽子を見ていたいらしく、コーヒーサイフォンを抱えて戻って来た。
「これが私の趣味でしてね、お二人でどうぞ」
そう言って、テーブルに並べ孝は部屋を出て行った。
その足で孝は庭に出て片隅にしばらく佇んでいた。
その足で孝は庭に出て片隅にしばらく佇んでいた。
「コーヒーでも飲まないか?」
妙に優しい孝。
「二人に刺激されたの?」
薫は笑いながらコーヒーを受け取った。
「これが評判の珈琲ね」
陽子はそう言いながら、ソーサーとカップを二つテーブルに並べた。
「一度だけ飲んだ事があるの。テニススクールに所属しているお友達と。本当に美味しいんだから」
陽子はワクワクしていた。
翼は陽子の楽しそうな様子を見て、そっとカップを口に運んだ。
翼が目を覚ます。
ふと我に戻って、周りを見る。
陽子がいなかった。
(確か……さっきまでいたよな?)
玄関に行ってみると靴はそのままあった。
(嘘!? 何処に行ったんだ!?)
翼はアチコチ探してみた。
でも何処にもいなかった。
居間に行ってみると薫が鼾をかいて眠っていた。
翼は薫を揺すって起こそうとした。
一旦は起きた。
でもまた眠ってしまった。
「睡眠薬?」
翼は青ざめた。
(まさか!? 親父が……?)
『いい娘じゃないか。翼には勿体無い。そうだ俺の女になれ。いい思いさせてやるぞ』
秩父神社で、陽子に掛けた言葉を思い出した。
「ヤバい!!」
慌てて孝の寝室に飛んで行く。
三学期から堀内家から学校へ行く事になったからだった。
やはり武州中川の木村家だと、翼の学校が遠くなる。
陽子のこの意見に、節子は渋々承知したのだった。
甲斐甲斐しく陽子が働く。
「いい娘だ。やっぱり翼には勿体無い」
孝は陽子をジロジロ見ていた。
「そこで何してるの? 全く油断も隙もない」
薫は呆れ果てて、孝を追い払った。
それでも孝は陽子を見ていたいらしく、コーヒーサイフォンを抱えて戻って来た。
「これが私の趣味でしてね、お二人でどうぞ」
そう言って、テーブルに並べ孝は部屋を出て行った。
その足で孝は庭に出て片隅にしばらく佇んでいた。
その足で孝は庭に出て片隅にしばらく佇んでいた。
「コーヒーでも飲まないか?」
妙に優しい孝。
「二人に刺激されたの?」
薫は笑いながらコーヒーを受け取った。
「これが評判の珈琲ね」
陽子はそう言いながら、ソーサーとカップを二つテーブルに並べた。
「一度だけ飲んだ事があるの。テニススクールに所属しているお友達と。本当に美味しいんだから」
陽子はワクワクしていた。
翼は陽子の楽しそうな様子を見て、そっとカップを口に運んだ。
翼が目を覚ます。
ふと我に戻って、周りを見る。
陽子がいなかった。
(確か……さっきまでいたよな?)
玄関に行ってみると靴はそのままあった。
(嘘!? 何処に行ったんだ!?)
翼はアチコチ探してみた。
でも何処にもいなかった。
居間に行ってみると薫が鼾をかいて眠っていた。
翼は薫を揺すって起こそうとした。
一旦は起きた。
でもまた眠ってしまった。
「睡眠薬?」
翼は青ざめた。
(まさか!? 親父が……?)
『いい娘じゃないか。翼には勿体無い。そうだ俺の女になれ。いい思いさせてやるぞ』
秩父神社で、陽子に掛けた言葉を思い出した。
「ヤバい!!」
慌てて孝の寝室に飛んで行く。