二重人格三重唱
シルバーのスポーツタイプの自転車が明智寺方面からやって来る。
何処かで見たなと思い、翼は硝子ごしに目で追った。
乗っていたのは翔だった。
「よお、しばらく」
翼が庭に出ると、翔が声を掛けてんきた。
「珍しいな。そう言えば受験どうなった」
「受かるはずないよ。東大だよ。母さんがどうしても行っけってウルサくて」
「大変だなお前も」
「お前こそ、大学に行きたいんじゃないのか?」
翔が痛いとこを突く。
こんな風に話すのは久しぶりだった。
相変わらずブランド品で決めている翔。
でも羨ましいとは思わなかった。
確かに一時は憧れた。
母の愛を独り占めする翔を憎んだりもした。
だから余計に勉強した。
母に愛されたい一心で。
実は翼は勉強は嫌いではなかったのだ。
「お前はいいよ。やらなくても出来るから」
「いや違うよ。お祖父ちゃんと叔父さんに教えてもらっていたんだ」
「えっーそうだったのか。そのお陰で俺は塾通い。お袋はお前の成績が上がる度キリキリして」
その時翼は、翔より成績が良かったことが薫に憎まれた原因だったことを知った。
庭で花の手入れをしていた陽子が翼に気付き、一緒に一息つこうと家の中に入った。
翼は庭にあるテーブルセットに翔を案内して、陽子が用意してくれたたコーヒーを注いで翔に勧めた。
コーヒーカップが二つ置いてあったので、自分と翔のために用意してくれたのだと思っていかたらだった。
「あれっ翼、コーヒー飲めなかったんじゃ」
「陽子が入れると美味しいんだ」
「ぬけぬけと言うな」
翔は笑っていた。
「だって、父さんが入れるコーヒーって苦いだけじやない。みんな良く平気で飲めるよな。陽子のコーヒーはまろやかと言うか、優しさそのものなんだ」
陽子が再び家に入ったのを確認しながら翼が言う。
「良く言うよ。親父のコーヒーはな、特別なんだよ。テニスコートに隣接してるカフェの最高級品なんだから」
「確かブルーマウンテンだとか?」
「お。さては陽子さんにでも聞いたな。だけどブルーマウンテンだけじゃないんだ。特別ブレンドだからな。水にもこだわって、龍神水を夕方汲んで来るみたいだよ。其処までやるからあの濃厚でまろやかなコーヒーになるんだよ」
何処かで見たなと思い、翼は硝子ごしに目で追った。
乗っていたのは翔だった。
「よお、しばらく」
翼が庭に出ると、翔が声を掛けてんきた。
「珍しいな。そう言えば受験どうなった」
「受かるはずないよ。東大だよ。母さんがどうしても行っけってウルサくて」
「大変だなお前も」
「お前こそ、大学に行きたいんじゃないのか?」
翔が痛いとこを突く。
こんな風に話すのは久しぶりだった。
相変わらずブランド品で決めている翔。
でも羨ましいとは思わなかった。
確かに一時は憧れた。
母の愛を独り占めする翔を憎んだりもした。
だから余計に勉強した。
母に愛されたい一心で。
実は翼は勉強は嫌いではなかったのだ。
「お前はいいよ。やらなくても出来るから」
「いや違うよ。お祖父ちゃんと叔父さんに教えてもらっていたんだ」
「えっーそうだったのか。そのお陰で俺は塾通い。お袋はお前の成績が上がる度キリキリして」
その時翼は、翔より成績が良かったことが薫に憎まれた原因だったことを知った。
庭で花の手入れをしていた陽子が翼に気付き、一緒に一息つこうと家の中に入った。
翼は庭にあるテーブルセットに翔を案内して、陽子が用意してくれたたコーヒーを注いで翔に勧めた。
コーヒーカップが二つ置いてあったので、自分と翔のために用意してくれたのだと思っていかたらだった。
「あれっ翼、コーヒー飲めなかったんじゃ」
「陽子が入れると美味しいんだ」
「ぬけぬけと言うな」
翔は笑っていた。
「だって、父さんが入れるコーヒーって苦いだけじやない。みんな良く平気で飲めるよな。陽子のコーヒーはまろやかと言うか、優しさそのものなんだ」
陽子が再び家に入ったのを確認しながら翼が言う。
「良く言うよ。親父のコーヒーはな、特別なんだよ。テニスコートに隣接してるカフェの最高級品なんだから」
「確かブルーマウンテンだとか?」
「お。さては陽子さんにでも聞いたな。だけどブルーマウンテンだけじゃないんだ。特別ブレンドだからな。水にもこだわって、龍神水を夕方汲んで来るみたいだよ。其処までやるからあの濃厚でまろやかなコーヒーになるんだよ」