総長からの「愛してる」Ⅱ
「昴」
呼吸が止まった。
止まったナイフには、なにも刺さっていない。
ただ、刃先に今にも刺さりそうな手だけが見えた。
それは、旭の手じゃない。
見覚えのある、手。
あの日、たった一人生き残ってしまった罪深い手のひら。
「……俺の手……。」
無意識に庇ってしまった。
ナイフを振り下ろした右手が止まらない代わりに、俺の左手は旭を守ろうとしていた。
「お前は “仲間想い” だから。
どんなに強がっても、きっと守っちまうだろ。」
「廉也……、俺は、そうしたら生きる意味がなくなる。」
「生きることは、罪じゃねぇよ。」