総長からの「愛してる」Ⅱ





「昴」








呼吸が止まった。



止まったナイフには、なにも刺さっていない。




ただ、刃先に今にも刺さりそうな手だけが見えた。




それは、旭の手じゃない。


見覚えのある、手。



あの日、たった一人生き残ってしまった罪深い手のひら。




「……俺の手……。」




無意識に庇ってしまった。



ナイフを振り下ろした右手が止まらない代わりに、俺の左手は旭を守ろうとしていた。





「お前は “仲間想い” だから。

どんなに強がっても、きっと守っちまうだろ。」



「廉也……、俺は、そうしたら生きる意味がなくなる。」



「生きることは、罪じゃねぇよ。」



< 340 / 427 >

この作品をシェア

pagetop