総長からの「愛してる」Ⅱ
窓の外の流れ過ぎてゆく懐かしい景色を見つめる。
この街は、やっぱりいつ見てもホッとする。
自分が育った故郷だからかな。
幸せな思い出ばかりじゃないけど、確かに私はここで生きていた。
途中通った海沿いの景色に、また泣きそうになるのを堪えた。
二度と戻るつもりのなかった故郷に、また私は訪れているんだ。
バスに乗っている数十分。
私が窓から目をそらす瞬間は一秒もなかった。
この目に焼き付けよう。
私が育った故郷の景色を、二度と忘れないように。
今度こそ、二度と戻ってこないから。