夕焼けのおちる図書室で
「おっせぇな、裕介」
部活の少し前。
教室に忘れ物を取りに行った友人__村田裕介を待っている俺、藍川遥。
若干イラつき気味。
教室はこの階より2階上だ。
走っていけばすぐの距離なのに、こんなに遅いってことはあの野郎、歩いてるな。
「はぁ…バッグ重た…」
進級してもうすぐ一ヶ月立つ。
サッカー部に所属する俺は日々重なる練習に疲れを感じていた。
相変わらず重い部活のバッグを下ろして壁に寄りかかった。
ふぅ、と息を吐いて、目を瞑った。
「邪魔」
凛とした声が聞こえ、目を開くと黒髪の少女が立っていた。
俺より数センチ高めだ。
「…あ、わりぃ」
どうやら、俺が壁だと思い込んでいたものはドアだったらしい。
荷物を動かしている俺に、黒髪の少女は構わず俺を押し退けてドアの中へと入っていった。
図書室、かぁ。
こんなところにあったんだな。
ここ、北城中学校に入学してから1年が立っているが、俺は基本的に外で遊ぶタイプ、
しかもここは教室から遠いため、図書室の場所なんて把握していなかった。
「遥ぁっ、悪い!!担任に捕まっちまってさぁ~」
「裕介!!まぁ、いいよ。早く部活行こ」
「おう!!」
ふと、図書室の中に目をやるとカウンターに座って分厚い本を開いている君が見えた。