夕焼けのおちる図書室で
ガラ…
「こんにちはーっ!!」
藍川君も部活に行った、放課後。
普段なら、誰もいない図書室に元気な声が響いた。
「…貸出ですか?返却ですか?」
私は静かに本を閉じ、バーコードリーダーを手にする。
「あ、栞ちゃん!!この前借りた本、返しにきたよ~」
「…面白かったかな?」
うん、と笑顔で答える可愛らしいこの子は、
空乃彩希ちゃん。
隣のクラスの人気者。
明るくてフレンドリーな性格。
綺麗な焦げ茶の髪の毛。
藍川君と同じくらいの小柄な体。
なるほど、モテるわけだ。
彩希ちゃんは、数少ない図書室の常連さん。
藍川君と違って、ちゃんと本を借りにくる。
「栞ちゃん、他に面白い本とかあるかなー」
本棚を覗き込みながら口元に人差し指を当てる彩希ちゃん。
狙わないでこういうことやってるんだよね。
天然っていうか…。
「…そういえば、この間彩希ちゃんの好きな作家さんの新作が入ったよ」
彩希ちゃんは、マジで!?と、目を輝かせる。
本が好きで、運動もできる。
人気者だし、可愛い。
嫌う要素なんて全然ないのに、何故だろう。
私は、この子が苦手だった。