シュガーメロディ~冷たいキミへ~

♯ 3 ピアノと理由


♯3


「ありがとうございました」


教室を出ていく最後のお客さんに深く礼をして私が顔を上げる頃には、あれほど賑わっていた校舎はいつもの落ち着きを取り戻そうとしているように見えた。


結局、あれからこのみちゃんにも水無月くんにも会えていない。


カフェのシフトとそれぞれのクラスのシフトがうまい具合に噛み合わなくて、気が付いたら文化祭が終わる時間を迎えていた。


おそらく今は、水無月くんは厨房担当だし、このみちゃんはクラスのシフトに入っている頃だろう。


このみちゃんにはもちろん口を滑らせてしまったことを謝りたいし、水無月くんにも……。


「……」


ズキン、と心が軋んだ音をたてた。


……私、ヒドイ態度取ったよね?


私が水無月くんのことを好きだとしても、それは勝手な私の都合なわけで、人として助けてもらってあの態度はないよ。


ただでさえ振った女の子と同じ委員会なんて、同じ担当なんて、気まずかったに違いないのに。


きっと、できれば関わり合いになんてなりたくなかっただろうなって、思うのに。



「……やっぱり、謝らなくちゃ」



今ならまだ、厨房の方にいるはずだ。

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